カナダ王室造幣局の歴史
目次
1908年の創立
創立から113年を迎えるカナダ王室造幣局は、100%民営のカナダ公社で、カナダで流通するすべての貨幣の鋳造およびそれを支える流通システム全体の管理責任を担っている。1世紀の間に、金と銀の精錬所までも所有する世界有数の流通貨幣、コレクターコイン、地金型コイン、投資用コインの鋳造業者に成長したカナダ王室造幣局の従業員数は1200人を越え、世界でも最新かつ革新的な造幣局の一つである。
平坦とは言えぬ歴史
しかしカナダは常に国内でコインを鋳造してきたわけではない。歴史の変転の中で、平坦とは言えぬ時を過ごして来た。世界で二番目に広く豊かな大自然とさまざまな資源に恵まれたカナダには、数千年前ベーリング海峡を越えアジアから渡来した先住民が住みつき、16世紀の大航海時代に仏英の定住植民地が築かれた。当然のことながらこの時期、植民地ではそれぞれ本国の通貨が使用され、両国の激しい抗争の末、1759年のパリ条約で全土が英国の支配下に入り、貨幣は英国のものに一本化された。
1776年のアメリカ独立後もカナダは英領に留まって、1867年にようやく英連邦内の自治領となる。1908年、カナダ王室造幣局が開設されるが、デザインやツール(鋳造用機械)はロンドンの英国王立造幣局が受け持ち、カナダはそのオタワ支店という位置づけであった。第一次大戦参戦、ベルサイユ講和会議参加など国際的な実績を積み上げたカナダは1926年には外交権を獲得、1930年、造幣局もカナダの全額出資による独立組織となったのである。翌31年、英連邦を法的に定義づけたウェストミンスター憲章の制定で、“君臨すれども統治せず”の英国女王を戴く立憲君主制となり、ついに国家として実質的な独立を遂げたのだった。
ウィニペグ造幣所は一秒で750枚鋳造可能
オタワ、ウィニペグにあるカナダ王室造幣局のふたつの造幣所が、カナダの文化、歴史や価値観を記念する流通貨幣から革新的な最先端テクノロジーを駆使して限られた数量を鋳造するコレクターコインまで、幅広い興味に応えるコインおよび関連製品を鋳造している。オタワ造幣所では手彫りのコレクターコインや記念コイン、地金型金貨、大小のメダルなどを担当し、流通貨幣や記念発行コインを鋳造するための金型など、すべてのマスター金型はここで作られる。金や銀の精錬、最先端技術を使った作業もオタワ造幣所で行なわれている。1975年に設立されたウィニペグ造幣所は大量生産を行なうハイテク施設であり、国内流通の通常貨幣はすべてここで鋳造される。カナダ王室造幣局のウィニペグ造幣所は一日に2000万個(一秒で750枚)の貨幣鋳造が可能である。
カナダ王室造幣局は諸外国の流通貨幣、ブランク、海外のコレクターコイン、貴金属のブランクや諸外国のメダルトークンの設計・鋳造も行なっており、数十カ国のために520億枚以上の貨幣を鋳造してきている。
※画像はカナダ王室造幣局から許可を得て使用しています。
南の人
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